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使徒's

広く。浅く。多様な視点から・・

「ニュース女子」を批判するメディアこそが追及しなければならないこと

今年の1月2日放送分「ニュース女子」の内容に関してBPOが審議入りしていますが、それに関して元メディア人の水島宏明氏によるこのような記事を拝見しました。

news.yahoo.co.jp


この中で

MXと対照的なのが、大阪の毎日放送だ。「事実とは何か」を真摯な姿勢で取材し、丁寧な番組づくりをしているが、その中では今回の「ニュース女子」の問題も登場する。
基地反対運動について取材した同社ドキュメンタリー「映像’17  沖縄 さまよう木霊 ~基地反対運動の素顔~」では、「ニュース女子」で放送された基地反対派の妨害行為によって破壊された救急車の写真が、検証報道の結果、実は沖縄の救急車の写真ではなかったという事実が報道されている。

毎日放送(MBS)制作の番組「さまよう木霊」を高く評価しておられます。
そこで「さまよう木霊」の批判のロジックを検証してみました。

[破壊された救急車の写真]
この番組でとりあげられた「破壊された救急車の写真」の出所はあるYouTuberが2016/10/04に公開したものです。

www.youtube.com


音声を聞くと「救急車を襲撃し」とありますが、同時に「画面で見ていただいている救急車はイメージということで、襲撃をされたものではない」とも述べられており、画像は無関係であることを明らかにしています。
また車体には「尾道消防署」と大きく書かれていますからこれがイメージであることは一目でわかるものでしょう。

次にfacebookにて(10月1日に)発信されたものを取り上げています。
その男性は発言のうちで反対派が「救急車を停止させ、勝手にドアを開けた」という部分については、数日後には「聞いた話」だと訂正しています。

ニュース女子において、救急車の件についての言及があるのは地元住民の依田氏の発言の中です。

インタビューに答えて「救急車を止めて、現場に急行できない事態がしばらくずーと続いてた」と話しています。

[違う3者の言葉を混同させている]
前述の2者は「救急車を襲撃」「勝手にドアを開けた」と、反対派が直接的に救急車を止めたことを述べています。
ニュース女子」の依田氏は「現場に急行できない」と述べていますが、「救急車を止めた」という表現については反対派が直接的に救急車を止めたという主張なのかどうかが判然としません。
「さまよう木霊」の番組内での依田氏の発言でも「救急車のそこに出動して向かう先にいけなかったという、遅れて到着したというのは事実です。」と述べていますが、これは「直接的に救急車を止めた」というよりは「往来に支障があって遅れた」という認識で主張しているように見えます。
ところが実際に消防署から確認したのは「反対派による妨害が無かった」ということだけです。
これだけでは「ニュース女子」の依田氏の発言を否定できないでしょう。
なぜならば「工事車両を止めようと動いたために、やがてこの県道を使う村全体に影響が出始めました。」と「さまよう木霊」でも伝えられていますから、工事車両を止めたことで間接的に救急車が巻き込まれることは充分に考えられます。
また、依田氏の発言が伝聞によるものだと確認したとしても、そのような状況があるのであればその信憑性を疑うことにもならないでしょう。

ところが「さまよう木霊」では、個人的なSNSでの発言内容に過ぎないような発言を疑わしいと指摘をすることで、あたかも「ニュース女子」の依田氏の発言までが疑わしいものであるかのように印象付けています。

[印象操作がフェイクを生み出す原因となっている]
この件は「第37回新沖縄通信」でも「ニュース女子」批判の材料として使用されています。

www.youtube.com

さらに冒頭に挙げた水島宏明氏に至っては
>「ニュース女子」で放送された基地反対派の妨害行為によって破壊された救急車の写真
というように「ニュース女子」で放送されたわけでも無い「破壊された救急車の写真」に言及し、それを「ニュース女子」批判に関連付けています。
ここまでくるとさすがにこれは印象操作を超えてフェイク(嘘)の主張のレベルです。

(なお「第37回新沖縄通信」の司会の升味佐江子氏はBPOの委員長代行の立場です。これではたして公正な審議が期待できるのかは大いに疑問です。)

委員の皆さん | BPO | 放送倫理・番組向上機構 |

両方の番組を検証し、番組で紹介されたソースを検証すれば明らかに「さまよう木霊」が「ニュース女子」批判のために偏向しているのがわかるのですが、一般の視聴者はそこまでファクトチェックしているわけではないことを前提の上でこのような番組作りをしたのでしょう。
これはつまり視聴者に対して「高を括る」ような報道を続けてきた姿勢の表れだといえるものです。

[公人自身が経験した事実として国会で言及]
3月9日に和田政宗参議院議員が自身の経験した事実として反対運動の過激な面を述べています。
それに関連して、警察庁警備局長が「反対運動を行っている者の一部には極左暴力集団も確認されていると承知している」との認識を示しました。

www.sankei.com

この報道を目にしますと、個々の個人的な発言事例においては一部にはデマや誇張も含まれるのでしょうが、全体的に捉えるのであれば「ニュース女子」で示された認識(反対派の過激さ)のほうが事実に近いのでは?と考えるのが自然なように思います。
これを放置するようであれば「ニュース女子」の認識のほうが正しいのでは?と思います。

参議院インターネット審議中継 3月9日内閣委員会での和田政宗参議院議員の答弁。このサイトで検索して動画が見れます。

ニュース女子」を批判するメディアはその信憑性をかけて和田議員や警察庁を追求するべきでしょう。

ニュース女子」もそれを批判する側も、お互いに違う事実認識のもとに立っているのですから、論争から逃げずに、安易に謝罪せずに、どちらが正しいのかはっきりするまでとことんやりあって欲しいものです。

その中から国民は「正しい事実認識」に到達するものと思います。

法人税の一律減税に代わる、源泉所得税を税額控除する税制

前稿のまとめとして・・

合理化やロボテクス・AI化の流れは不可逆的なものであり、アメリカに産業が戻ったとしても、多くの労働価値は相対的に低下していくという流れは避けられないでしょう。
そして、企業が利益追求のもとに生産性向上を図っていくならば、その生産性を低下させるような労働分配は削減の対象となることも企業論理としては相当であり、それを憤っていても仕方ありません。
ただし、労働者が社会の大半を占めているわけですから、このままでは社会の分断は避けられません。
このような問題点はアメリカのみならず先進国にはおおよそ当てはまるものでしょう。
雇用の数的な向上に留まらずに雇用の質の全体的な底上げという点を明確に打ち出すことが出来れば、低労働環境に従事する比率が高いヒスパニック系の支持も徐々に回復すると見込めます。
オキュパイ運動に示された多数の民意に沿った解決法の提示がなされれば、共和党支持者ばかりではなく民主党のサンダース支持者からの支持も回復するのではないでしょうか。
それは企業の社会的存在意義をどう捉えるかについての転換を基にした、別の価値観からの法人税制の改革案を提示していけばよいのではないでしょうか。

以下では税制に関する部分は日本の税制を基に考えています。
その上でアメリカの雇用も念頭にしていますので、制度の上で矛盾が生じることは承知しております。
ただし、ここでは考え方の提示をしているのにすぎませんから、他国に対してはそれに適合するような変更が為されればよいと思います。

なお前稿でも断っていますが、以下の意見はトランプ支持者の問題意識に沿って考えてみたものです。
必ずしも私の意見の反映とは限りませんし、反論することも多数思い付いています。

[赤字企業の存続意義]
企業が国家財政に対して果たすべき役割は法人税の負担ですね。
これまで利益を上げない企業は財政に対しては何らの貢献をしていないと考えられがちです。
ただし存続しているだけでも意味が無いわけではありません。
経済活動を継続しているということは、その企業に所属している労働者の生活を支えています。
そしてその労働者の所得の原資は企業の経済活動から生まれてくるわけでしょう。

・・と考えれば、その企業の労働者が個人所得税を納税するならば、その部分については企業として求められる納税義務を果たしていると考えることも可能ではないでしょうか。

[源泉所得税額を税額控除する法人税制案]
ほとんどの労働者は源泉徴収という形で企業を通して所得税を支払っています。
そこで
本来収めるべき法人税額からその企業が納付した労働者の源泉所得税額を「税額控除」する
という法人税改革を打ち出せばどうでしょうか。

そうすれば企業の大半は法人税の負担が無くなり損益分岐点が大幅に下がりますが、法人税収も大幅に減少するでしょう。
そこで、スタート時には100%の税額控除にはこだわらずに代替の財源の見込み状況に応じてまずは可能な%でとりあえず税額控除を始動させることを目指します。

トランプ米大統領は連邦法人税の税率を現行の35%から15%に引き下げる減税策を掲げています。
まずはこの減収分に相当する額を原資としてスタートさせればよいでしょう。

[高額所得者の源泉所得税は「税額控除」の対象外とする]
例えば(所得の平均値を上限と設定した場合)所得の平均値以上の高所得の労働者から徴収した源泉所得税額は「税額控除」の対象外とします。
そうすれば所得の平均値以下の労働者の雇用の底上げになると思います。
普通なら所得は、平均値>中央値 という関係になりますので、年月を経れば徐々に平均所得が(低所得層の底上げという形で)上がることが予想されます。
もちろんその数値(平均値)は毎年の税収データからはじき出して翌年の数値に反映させます。
このようにすることで所得格差の縮小を図ります。

ただし財源的な見通しが立つまでは、上限を中央値としてスタートさせてもよいでしょう。

労働分配率が高い企業の継続支援策

この税制は、労働分配率が高い企業の損益分岐点の大幅な引き下げであり、経済活動の継続支援策でもあります。
日本の現状を考えても、飲食・サービス業に留まらず医療・介護・保育・教育等の一般的には生産性が低いと見なされているが社会的には非常に重要度の高い業種の衰退に抗うものと思います。

このような改革は実現するかどうかの確証が必要なのではなく、将来の雇用に関してのビジョンを描いてみせることが必要なのだと思います。
労働者に支払う金額を経費とする考え方ではなく、利益の分配と考えることは、労働者の利益にも適うことでしょう。

[代替財源の見通し]
もちろんどのように代替財源を見込めるのかがこの税制の前提条件になると思います。
おおまかに言えば、労働分配率が低い企業・グローバル企業で納税回避姿勢が強い企業からの税収増を図ればよいと考えています。
それについての考察は次稿以降で述べます。

「America Great Again」の目指す雇用は取り戻せるのか?

トランプ米大統領の驚くべき大統領令の連発や数々の暴言にも関わらず、支持の大幅な減少には繋がっていません。

彼の「アメリカの雇用を取り戻す」という公言に対する期待が支持を集めているわけですが、彼の打ち出している保護主義的政策によって支持者の望む雇用の姿に戻るかどうかははなはだ疑問です。

[不満は雇用状況の変化にある]
そもそも現在の失業率は5.0%を切る低水準でほぼ完全雇用に近い状況です。経済状況は良好だと考えられます。
下記の全米・失業率ランキングマップ(郡別)を見ても、むしろ反トランプが多数を占める地域のほうが失業率が高いように感じます。

http://us-ranking.jpn.org/map/BLSUnemployment2012PerLF-Counties.png

引用元(http://us-ranking.jpn.org/BLSUnemployment2012PerLF.html)

これから考えるにトランプ支持者の不満は「雇用の数量的な不足」ではないことがわかります。
それは「雇用の変化や質」の変化に対する先の見えない希望の無さにあるのではないかということです。

何が問題なのか。
私は自由貿易グローバリズムの側にあって立場が違うのですが、トランプ支持者の問題意識に沿って考えて見ます。

[歓迎されない雇用拡大]

アメリカ国内の小売業の大手Sears、Macy's、Kmartsが相次いで企業存続が危ぶまれるほどに大幅な店舗閉鎖、雇用削減を計画していることが報じられています。

jp.wsj.com

この最大の原因はAmazon等のECの伸張のあおりであることは間違いないでしょう。
Amazonの根底にあるものは物流センターの「Amazon Robotics」、ドローン配送、実験店舗「Amazon Go」などが示すように、流通の合理化・省力化・無人化です。
Amazonの事業展開は単にECに留まらず、既にロジスティクスを中心に考えられているのでしょう。
ECも実店舗もAmazonからすれば「Amazon Dash Button」と同じようなもので、消費者とのひとつのインターフェイスに過ぎないのでしょう。

さて、Amazonは向こう1年半で10万人のフルタイム雇用者を増やすと先月に発表しました。
そのAmazonの雇用拡大姿勢は労働者層の望む方向とは逆行しているのではないかという疑問があります。
それはAmazonが一人雇用するとその周辺で数倍の人が失業すると言われるような、徹底した合理化方針にあります。

[現在の雇用状況は適化による結果]
トランプ氏が選出されてからというもの、規制撤廃・財政拡大・法人税大幅減税などの大胆な政策への期待が高まっていて、市場は上昇拡大を続けています。
ただしそれでもなお各企業の人員整理は止まる兆しは見えず着実に進んでいるようです。
それは上記Searsのような業績悪化によるものだけに留まらず、生産を国内回帰させると公言している業種にも及んでいます。

www.cnn.co.jp

企業には「アメリカファースト」と同様に「自社ファースト」という公言できない原則があるわけですから、社会状況の変化に応じて雇用を最適化しようとするのは企業論理としては相当です。
ある企業が難民を1万人雇うとすれば当該国で同程度の解雇もあるだろうと想像するのは(市場が急拡大するわけではありませんから)不自然ではありません。
リストラクチャリングの一環として人件費を下げるために難民を雇うのだとする見方もあるでしょう。
いずれにせよ、難民を1万人雇うことを賞賛するのもお人好しなのかもしれませんし、解雇に憤るのもお門違いなのかもしれません。

社会から求められているものに応じることで企業は対価を得ますし、最も社会に適応した企業が成長していきます。
経済の拡大に関わらず雇用が悪化するのならば、それは社会状況に雇用が適化してきた結果を示すものだと考えます。
その改善策として企業に変化を求める(アメリカ国内に生産拠点を移すように求める等)よりも、おおもとの社会状況を変える事を模索するほうが前向きな姿勢だと思います。

[変化への適応に対するボトルネック
こちらに興味深い考察があります。

jp.techcrunch.com

私自身は概ねとしてはこの見方は理解しますが、プラス面と同様にあると思われるマイナス面について言及されていないのは片手落ちに感じます。

記事中に指摘されているように人々が成熟産業から成長産業へとスムーズに移転できるように考えるのは正しいのですが、人間は個の立場からはその合理性をしばしば拒絶します。
これから長い人生を考えなければならないような若い世代にとってはまだハードルが低いでしょうが、もう先がそれほど長くないベテラン労働者が他の産業へ移動して一から新人として再スタートするにはハードルが高すぎるのです。
長年にわたって築いてきたものを全て捨てる勇気、それまでの仕事を通じて得た誇りやプライド、さらに自己への存在価値の問いかけなどが経済の合理性を否定するわけです。
人間の個々の不合理性の集合が社会全体の合理性と対立するわけで、経済的には正しくても政治的には正しいとは限りません。

近年の社会変化の加速度合いは人間が個として対応するには急激すぎるように感じます。
変化に対応する能力や余裕のある人々が、それらが不足する人々の存在を置き去りにしてきたことがアメリカの約半数の人々を追い詰める結果となり猛烈な反発を招いているわけです。
30~40年ほどの年月を費やせば労働者世代のOSが総入れ替えになって解決するのでしょうが、とりあえずの方策としては急激な変化の影響を緩和するという形が政治的には社会の分裂を招かないと思われます。

[テクノロジーと雇用の関係]
記事中の
「この25年以上に渡って事実上すべての新しい民間の雇用は、創業5年未満の企業によって生み出されている。」
「実際、1988年から2011年の間に、創業5年以上の古い企業は、8年分を除けば破壊した雇用の数が創出した雇用の数を上回っている」
は特に変わったことを言っているわけではありません。
古い企業=古い業種と考えられますし、そのような業種は雇用はほぼ飽和状態にあると想像できるからです。
新しい企業は新品のスポンジのように古い企業から雇用を吸収しているわけですね。
そして古い企業の雇用破壊に関するテクノロジー産業の影響も考慮されていません。
それは「市場の変化によるものだ」との指摘には同意しますが、先ほどのAmazonの雇用拡大と同じ構図なんだろうなと考えます。

ただしそれでもテクノロジーは人類を豊かにしてきたのは間違いありません。
それは製造業に限りません。
数十年前は人口の急激な増加から食料不足の時代が来ると言われていましたが、実際には食料生産の伸びのほうが上回ることになりました。

http://www.hungerfree.net/cms/wp-content/uploads/2016/02/hunger_world_a.png


特に途上国の生産性向上が世界の豊かさの増大に貢献しているものと思われます。

[生産性の向上が労働環境を相対的に下げる?]
これまで企業は生産性の向上を追求することで利潤を上げ納税義務を果たしてきました。
労働者の生産性で考えれば、より付加価値の高い製品やサービスを生み出すことです。

労働生産性を上げる単純な方法として「値上げ」がありますが、それと同じように一方では「経費の削減」という方法もあります。
ほとんどの企業にとって人件費は経費の多くを占めますのでその人件費をいかに削減するかが常に経営上の課題となります。
それは絶対的な削減とは限らずしばしば相対的にあらわれます。

Amazonの例で考えますとその職場環境が相対的に考えて過酷であることはNYTにても報じられています。

irorio.jp

(リンク先にNYT英文の原文へのリンクあり)

[生産性の追及とは別の価値観が求められている]
生産性の向上はマクロで見れば豊かさとなって寄与するのでしょうが、問題はその豊かさが偏在することです。
ロボテックス化、AI化といった技術革新の進展は、豊かさの恩恵を受ける労働者と豊かさに与れない労働者とに分けていったのでしょう。

付加価値を高めるためのテクノロジーであれば歓迎されるのですが、それが人件費を削減する方向へと向かうようになれば雇用状況は相対的に悪化します。
人件費の安さを利用した自由貿易による悪影響よりも、テクノロジーが人件費を削減する目的として利用されることの悪影響のほうが大きいというのが結論ではないでしょうか。

もちろん「生産性を上げることで高い付加価値を生み出しそれを豊かさとして社会に還元していく」という経営側の価値観は否定されるものではありませんが、労働者の立場からすればそれとは別の価値観の確立も求められているのだと感じます。
その別の価値観を後押しするような社会のシステムがアメリカのように分裂した社会にとっては必要なわけです。
トランプ氏は近々法人税についての大胆な方向性を示すようですが、法人税を単純に一律減税するよりもその税制改革を労働者が求める価値観の並立のために利用すればどうかと思います。
打ち出しのイメージを「労働分配率重視」という形で表現することが出来ればさらに労働者の支持も増えることでしょう。

具体的な法人税改革についての私の考えもあるのですが、本稿が長くなりましたので次稿に分けて書こうと考えています。

関税20%を負担するのは消費者なのか!?

トランプ米大統領がメキシコ国境の壁の建設費負担を巡ってメキシコからの輸入関税を20%にすると提案しました。

これについて大西氏が

ohnishi.livedoor.biz

と主張されています。
この意見についてほぼ直感的に感じたことを書いてみます。
大西氏の意見への批判や反論ではありません。たぶん氏とおおまかには同じ認識に収まるものと思います。

なお、Forbes誌は

forbesjapan.com

と指摘しています。

大西氏の仰るようにトランプ氏の「メキシコに払わせる」との言葉につられてあたかもメキシコ側が費用を負担するかのように受け取る人に対しては有用な指摘でしょう。
ただしアメリカの消費者が負担するだけの結果になると単純に考えることもできません。
そして、関税を負担するのが誰かということよりもそれで割を食うのは誰かということのほうが問題だと考えます。

[アボガドは国内で調達できない?]
大西氏はアボガドを例に挙げて論を展開されています。
そこで世界のアボガドの生産量について確認してみました。

www.kudamononavi.com


これを見ますとメキシコが31%でダントツですが独占的ではなく生産量合計では中南米+アメリカのほうが上回っています。
「ほとんどをメキシコから輸入している」としてもアメリカ国内でも生産力は有しており「国内からは調達できない」とも言えない状況ではないでしょうか。
つまり各国ともそれなりの生産力はあるわけですから、関税賦課前の価格(メキシコにおける生産~流通段階での価格)にも影響はあるでしょう。

[誰が負担するのか?]
制度としては関税を負担するのは一義的には消費者ではなく輸入業者です。
それをどのように末端価格に転嫁してゆくのかは流通過程で起こる個々の業者の自由判断の結果に左右されますから、消費者にストレートに価格転嫁されるという前提で市場を見るわけにもいかないでしょう。
コストは最終販売価格を決める非常に大きな要素ですが、それは当然に販売価格に転嫁されるというものでもありません。
市場の収縮を避けるためにおそらく相当の部分は流通段階で吸収されていくとも考えられます。
まあ個々の商品の性質によるのでしょうけど。

[影響]
アメリカ国内の消費者への影響としては物価が高くなることくらいでしょうか。
流通への影響としては、商品によっては需要が収縮することや他の商品に置き換えられていくことが考えられます。
生産者への影響としては生産者への価格引下げ圧力が強くなったり需要の減少があったり。

メキシコの側から見るとアメリカに対して安い労働力と地の利(運送コストや時間)とNAFTAによる恩恵という強みを背景に生産を拡大させてこられたわけですね。
(特にNAFTA+マキラドーラのコンビは強力)
その強みが逆に関税20%の実施によって弱みに変わればどうなるでしょうか。
大西氏が取り上げられている 主要輸出国 25 カ国の生産コスト比較: 世界の生産拠点の勢力図の変化(PDF) にも指摘されているように、低コスト化したアメリカへ回帰していくことは充分に考えられます。
第3国の新たな参入にも警戒しなければならないでしょう。

情勢が変わったのならば流通過程での個々の経営判断も見直されると考えるほうが自然だと思います。
(もちろんトランプ政権後を考えて「動かない」という選択もあるでしょう。)

[誰トク]
私はこの件の構図はアメリカ国内での利益移転だというように捉えています。
誰から誰へなのかは考えてみればすぐわかりますよね。
国内的には政府収入の増加、使える予算の増加をもたらすわけですからアメリカ国民は全体で見れば損をするというわけではありません。
得をする国民と損をする国民がいるわけです。
(ただし2国間および関係国に与える経済的影響によって損をするという考えもあります。)

[そもそも実行を前提とした発言なのか]
このような関税政策はNAFTA脱退が大前提となりますしWTO抵触の恐れもありますので実際には実行することは難しいでしょう。
もともとメキシコ国境の壁の建設自体の実現可能性も疑われることです。
万が一、負の側面を全て無視して実現へと動いたとしても土地収用計画から始めなければなりませんからトランプ政権のうちに実現する可能性は限りなく0に近いでしょう。

[着地点の予想]
アメリカのような消費大国が特定国に対して発言することはアナウンス効果が非常に大きいわけでそれだけで絶大な効果があります。
実際に為替はペソ安で推移していますし、トランプ政権という不透明な情勢ではこれからメキシコに投資する企業は大きく減るでしょう。
メキシコとしては絶対に極力すばやくアメリカと和解する必要があり、国民の反米感情とはうらはらに裏で交渉がなされることは必至かと思われます。
おそらく壁の建設に代わってメキシコの負担による国境警備の強化、アメリカに流入した不法移民の保護や送還に関わる費用やその正当性を受け入れるといったようなところに落ち着くのではないかと思われます。

基本的にこのようなやり方はアメリカのような大国としての品位を下げるものであって、解決法としてはもっとスマートなやり方があるでしょうにと思うわけです。