読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

使徒's

広く。浅く。多様な視点から・・

関税20%を負担するのは消費者なのか!?

トランプ米大統領がメキシコ国境の壁の建設費負担を巡ってメキシコからの輸入関税を20%にすると提案しました。

これについて大西氏が

ohnishi.livedoor.biz

と主張されています。
この意見についてほぼ直感的に感じたことを書いてみます。
大西氏の意見への批判や反論ではありません。たぶん氏とおおまかには同じ認識に収まるものと思います。

なお、Forbes誌は

forbesjapan.com

と指摘しています。

大西氏の仰るようにトランプ氏の「メキシコに払わせる」との言葉につられてあたかもメキシコ側が費用を負担するかのように受け取る人に対しては有用な指摘でしょう。
ただしアメリカの消費者が負担するだけの結果になると単純に考えることもできません。
そして、関税を負担するのが誰かということよりもそれで割を食うのは誰かということのほうが問題だと考えます。

[アボガドは国内で調達できない?]
大西氏はアボガドを例に挙げて論を展開されています。
そこで世界のアボガドの生産量について確認してみました。

www.kudamononavi.com


これを見ますとメキシコが31%でダントツですが独占的ではなく生産量合計では中南米+アメリカのほうが上回っています。
「ほとんどをメキシコから輸入している」としてもアメリカ国内でも生産力は有しており「国内からは調達できない」とも言えない状況ではないでしょうか。
つまり各国ともそれなりの生産力はあるわけですから、関税賦課前の価格(メキシコにおける生産~流通段階での価格)にも影響はあるでしょう。

[誰が負担するのか?]
制度としては関税を負担するのは一義的には消費者ではなく輸入業者です。
それをどのように末端価格に転嫁してゆくのかは流通過程で起こる個々の業者の自由判断の結果に左右されますから、消費者にストレートに価格転嫁されるという前提で市場を見るわけにもいかないでしょう。
コストは最終販売価格を決める非常に大きな要素ですが、それは当然に販売価格に転嫁されるというものでもありません。
市場の収縮を避けるためにおそらく相当の部分は流通段階で吸収されていくとも考えられます。
まあ個々の商品の性質によるのでしょうけど。

[影響]
アメリカ国内の消費者への影響としては物価が高くなることくらいでしょうか。
流通への影響としては、商品によっては需要が収縮することや他の商品に置き換えられていくことが考えられます。
生産者への影響としては生産者への価格引下げ圧力が強くなったり需要の減少があったり。

メキシコの側から見るとアメリカに対して安い労働力と地の利(運送コストや時間)とNAFTAによる恩恵という強みを背景に生産を拡大させてこられたわけですね。
(特にNAFTA+マキラドーラのコンビは強力)
その強みが逆に関税20%の実施によって弱みに変わればどうなるでしょうか。
大西氏が取り上げられている 主要輸出国 25 カ国の生産コスト比較: 世界の生産拠点の勢力図の変化(PDF) にも指摘されているように、低コスト化したアメリカへ回帰していくことは充分に考えられます。
第3国の新たな参入にも警戒しなければならないでしょう。

情勢が変わったのならば流通過程での個々の経営判断も見直されると考えるほうが自然だと思います。
(もちろんトランプ政権後を考えて「動かない」という選択もあるでしょう。)

[誰トク]
私はこの件の構図はアメリカ国内での利益移転だというように捉えています。
誰から誰へなのかは考えてみればすぐわかりますよね。
国内的には政府収入の増加、使える予算の増加をもたらすわけですからアメリカ国民は全体で見れば損をするというわけではありません。
得をする国民と損をする国民がいるわけです。
(ただし2国間および関係国に与える経済的影響によって損をするという考えもあります。)

[そもそも実行を前提とした発言なのか]
このような関税政策はNAFTA脱退が大前提となりますしWTO抵触の恐れもありますので実際には実行することは難しいでしょう。
もともとメキシコ国境の壁の建設自体の実現可能性も疑われることです。
万が一、負の側面を全て無視して実現へと動いたとしても土地収用計画から始めなければなりませんからトランプ政権のうちに実現する可能性は限りなく0に近いでしょう。

[着地点の予想]
アメリカのような消費大国が特定国に対して発言することはアナウンス効果が非常に大きいわけでそれだけで絶大な効果があります。
実際に為替はペソ安で推移していますし、トランプ政権という不透明な情勢ではこれからメキシコに投資する企業は大きく減るでしょう。
メキシコとしては絶対に極力すばやくアメリカと和解する必要があり、国民の反米感情とはうらはらに裏で交渉がなされることは必至かと思われます。
おそらく壁の建設に代わってメキシコの負担による国境警備の強化、アメリカに流入した不法移民の保護や送還に関わる費用やその正当性を受け入れるといったようなところに落ち着くのではないかと思われます。

基本的にこのようなやり方はアメリカのような大国としての品位を下げるものであって、解決法としてはもっとスマートなやり方があるでしょうにと思うわけです。