使徒's

広く。浅く。多様な視点から・・

法人税の一律減税に代わる、源泉所得税を税額控除する税制

前稿のまとめとして・・

合理化やロボテクス・AI化の流れは不可逆的なものであり、アメリカに産業が戻ったとしても、多くの労働価値は相対的に低下していくという流れは避けられないでしょう。
そして、企業が利益追求のもとに生産性向上を図っていくならば、その生産性を低下させるような労働分配は削減の対象となることも企業論理としては相当であり、それを憤っていても仕方ありません。
ただし、労働者が社会の大半を占めているわけですから、このままでは社会の分断は避けられません。
このような問題点はアメリカのみならず先進国にはおおよそ当てはまるものでしょう。
雇用の数的な向上に留まらずに雇用の質の全体的な底上げという点を明確に打ち出すことが出来れば、低労働環境に従事する比率が高いヒスパニック系の支持も徐々に回復すると見込めます。
オキュパイ運動に示された多数の民意に沿った解決法の提示がなされれば、共和党支持者ばかりではなく民主党のサンダース支持者からの支持も回復するのではないでしょうか。
それは企業の社会的存在意義をどう捉えるかについての転換を基にした、別の価値観からの法人税制の改革案を提示していけばよいのではないでしょうか。

以下では税制に関する部分は日本の税制を基に考えています。
その上でアメリカの雇用も念頭にしていますので、制度の上で矛盾が生じることは承知しております。
ただし、ここでは考え方の提示をしているのにすぎませんから、他国に対してはそれに適合するような変更が為されればよいと思います。

なお前稿でも断っていますが、以下の意見はトランプ支持者の問題意識に沿って考えてみたものです。
必ずしも私の意見の反映とは限りませんし、反論することも多数思い付いています。

[赤字企業の存続意義]
企業が国家財政に対して果たすべき役割は法人税の負担ですね。
これまで利益を上げない企業は財政に対しては何らの貢献をしていないと考えられがちです。
ただし存続しているだけでも意味が無いわけではありません。
経済活動を継続しているということは、その企業に所属している労働者の生活を支えています。
そしてその労働者の所得の原資は企業の経済活動から生まれてくるわけでしょう。

・・と考えれば、その企業の労働者が個人所得税を納税するならば、その部分については企業として求められる納税義務を果たしていると考えることも可能ではないでしょうか。

[源泉所得税額を税額控除する法人税制案]
ほとんどの労働者は源泉徴収という形で企業を通して所得税を支払っています。
そこで
本来収めるべき法人税額からその企業が納付した労働者の源泉所得税額を「税額控除」する
という法人税改革を打ち出せばどうでしょうか。

そうすれば企業の大半は法人税の負担が無くなり損益分岐点が大幅に下がりますが、法人税収も大幅に減少するでしょう。
そこで、スタート時には100%の税額控除にはこだわらずに代替の財源の見込み状況に応じてまずは可能な%でとりあえず税額控除を始動させることを目指します。

トランプ米大統領は連邦法人税の税率を現行の35%から15%に引き下げる減税策を掲げています。
まずはこの減収分に相当する額を原資としてスタートさせればよいでしょう。

[高額所得者の源泉所得税は「税額控除」の対象外とする]
例えば(所得の平均値を上限と設定した場合)所得の平均値以上の高所得の労働者から徴収した源泉所得税額は「税額控除」の対象外とします。
そうすれば所得の平均値以下の労働者の雇用の底上げになると思います。
普通なら所得は、平均値>中央値 という関係になりますので、年月を経れば徐々に平均所得が(低所得層の底上げという形で)上がることが予想されます。
もちろんその数値(平均値)は毎年の税収データからはじき出して翌年の数値に反映させます。
このようにすることで所得格差の縮小を図ります。

ただし財源的な見通しが立つまでは、上限を中央値としてスタートさせてもよいでしょう。

労働分配率が高い企業の継続支援策

この税制は、労働分配率が高い企業の損益分岐点の大幅な引き下げであり、経済活動の継続支援策でもあります。
日本の現状を考えても、飲食・サービス業に留まらず医療・介護・保育・教育等の一般的には生産性が低いと見なされているが社会的には非常に重要度の高い業種の衰退に抗うものと思います。

このような改革は実現するかどうかの確証が必要なのではなく、将来の雇用に関してのビジョンを描いてみせることが必要なのだと思います。
労働者に支払う金額を経費とする考え方ではなく、利益の分配と考えることは、労働者の利益にも適うことでしょう。

[代替財源の見通し]
もちろんどのように代替財源を見込めるのかがこの税制の前提条件になると思います。
おおまかに言えば、労働分配率が低い企業・グローバル企業で納税回避姿勢が強い企業からの税収増を図ればよいと考えています。
それについての考察は次稿以降で述べます。